筆者は3年ほどASPに勤めていたことがあります。そこでの業務内容は広告主と一緒にアフィリエイト広告の運用を成功させるために、打ち合わせして戦略練ったり、アフィリエイターに掲載を依頼したり、広告主とアフィリエイターがwin-win(広告主は売り上げが上がる、アフィリエイターは儲かる)になれるようなプログラム作りをしてきました。
担当広告主社数は200-300件を持っており、アフィリエイト広告運用ノウハウもある程度体系化できていると思います。そこで、今回は広告主向けにアフィリエイト広告の運用を成功させる方法について書いてみたいと思います。
アフィリエイト広告の運用がなかなかうまくいかない、ASPの担当や代理店が動いてくれない、という悩みをお持ちの担当者さんはぜひお読みください。
ちなみに、ASP時代の仕事内容の記事についてはこちらもあわせてお読みください。
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Contents
アフィリエイト広告の運用を成功させる大前提は、win-win-winであること
キレイゴトではなく、アフィリエイト広告の運用を成功させるためには、
- 広告主
- アフィリエイター(ASP)
- 消費者
の3者がwin-win-winであることが必要です。ちなみに広告主とアフィリエイターをつなぐASPはアフィリエイターが儲かれば、ASPも儲かるという収益構造ですのでアフィリエイターのwinとASPのwinは直結してます。
[memo title=”MEMO”]ASPの収益
ASPはアフィリエイターが売り上げた成果報酬額に対して、手数料として20-30%ほどを上乗せして広告主に請求しています。他にもASPによっては、月額20,000-50,000円程度、アカウント開設時の手数料として50,000円ほどがかかる場合もあります[/memo]
では、なぜwin-win-winであることが大事なのでしょうか。説明していきます。
広告主がwinになるためには、アフィリエイターのwinが欠かせない
アフィリエイターは稼いで自分の生活を、より金銭的に豊かにすることが目的です。そのためには、広告主のアフィリエイトプログラム内容が稼げるものでないといけません。アフィリエイターはプログラムの主に以下の内容を見ています。
- 承認率
- 報酬額
- 成約率
- 承認作業の頻度
- 商品知名度
- バナー広告(クリエイティブ)のバラエティ
- プログラム紹介文
- 提携審査の有無
- 特単の条件が明確かどうか
(具体的にどうすればいいかは後述しますのでご参考ください)
このあたりの内容を改善していくことで有力アフィリエイターがたくさんついたり、ランキングサイトで1位掲載に繋がり、広告主に大きな収益がもたらされます。
広告主の中にはアフィリエイトで売ることを想定して、商品の企画開発前にASP担当者に相談したり、アフィリエイターと一緒に商品の企画をする会社もあります(仲良くなった広告主の社長はアフィリエイト広告メインに成功し、フェラーリを乗り回していますw)。
アフィリエイターがwinになるためには、消費者のwinが欠かせない
アフィリエイターが商品を売るためには、消費者にとっていいものでないといけません。商品に魅力が感じない、競合他社製品と比べて見劣りがするようだとCVR(成約率)も低いので、アフィリエイターが頑張って集客してもしても売れません。
また、アフィリエイター自身がその広告主の商品のファンで紹介するということもよくある話です。
それに商品がよくないと購入した消費者は、その商品を紹介したアフィリエイトサイトからは二度と商品を購入しようとは思いませんので、アフィリエイターも紹介する商品の質には敏感になります。
消費者がwinになるためには、広告主のwinが欠かせない
消費者はより安い価格で、より良い商品を求めます。そのためには企業側の努力が欠かせませんが、企業が経営を安定して続かせるためには収益がないといけません。
仮に、企業の経営が行き詰まると、企業は消費者のメリットを無視して自社にとっての利益を優先するようになります。極端な例ではありますが、てるみくらぶの事件はその一例ではないでしょうか。
[sanko href=”http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1711/13/news051.html” title=”てるみくらぶは禁断の「粉飾くらぶ」 逮捕2日前、「カネ返せ!」怒号飛び交った債権者集会” site=”ITmedia NEWS”]
逆に、企業に収益が安定して入ってくるようになると、企業は利益を事業に再投資してより良い商品を開発しようとします。
こういう論理で消費者がwinになる(=より安い価格で、良い商品を手に入れる)ためには、広告主に収益がないとできません。
アフィリエイターに選んでもらえるプログラムにするためには?
先ほどご紹介したように、広告主はアフィリエイトプログラムを魅力的に見せる必要があります。具体的な方法について書いていきます。
承認率
せっかく売り上げを上げても否認割合が多いアフィリエイトプログラムにはアフィリエイターは定着しません。
また、Twitterやアフィリエイター同士のネットワークを通して悪い噂はすぐに広まり、提携がなかなかつかないといった悪い循環に陥ります。
あくまでも目安ではありますが、承認率の理想は90%以上、低くても70%以上は欲しいところです。
報酬額
成約1件あたりの報酬額が高いとそれだけアフィリエイターの提携も増えます。多くの場合、この報酬額は「限界CPA(一人のお客を獲得するのに支払うことができる最大の広告費用)」を算出して決定すると思います。限界CPAを上げるためにはLTVを上げなければいけませんので、
- 購入者のアフターフォロー
- 客単価アップのためのクロスセル・アップセル
- 商品付加価値による商品単価アップ
により、LTVを上げることで、報酬額(限界CPA)も上げることができ、アフィリエイターの提携増加にもつながります。
成約率
アフィリエイターが誘導した先の広告主が用意したLP(ランディングページ)の成約率です。誘導しても誘導しても成約しないようなLPは、アフィリエイター離れにつながります。
アフィリエイト広告の運用に成功している広告主は、多様な訴求ができるように複数パターンのLPを用意するとともに、常日頃から細かいLPO(ランディングページのテストによる最適化)やEFO(購入フォームのテストによる最適化)を繰り返し行なっています。
承認作業の頻度
アフィリエイターへの支払いのサイクルはASPによって違いますが、多くの場合月末で締めて翌々月に支払われることが大半です。そのため、アフィリエイターとしては広告主には早く承認作業をしてほしいと考えます。
- 承認作業の頻度が少なかったり
- 月末に行なわなかったり
すると間違いなくアフィリエイターは離れます。成果を発生させてもなかなか承認されないとアフィリエイターの心理としては不安です。
最低でも月末に必ず1回。できることであれば月に2回、週に1回と多い方がアフィリエイターは安心して広告主の商品を紹介できます。
商品知名度
なかなかコントロールしにくい部分かとは思いますが商品知名度が高い商品は、報酬額などの条件が低くても提携数は増えます。予算に余裕があるようであればインフルエンサーマーケティングや雑誌タイアップ広告などを使い、商品の知名度を上げる努力をするといいでしょう。
一度有名なブランドを確率させてしまえば、ブランド名の横展開によりはじめからある程度の知名度を獲得できるのでオススメです。アフィリエイターも、「あの有名な〇〇の新商品だから売れるだろう」と紹介してくれやすいです。
熱心なASP担当であれば、この辺の施策も提案してくれることがあります。
バナー広告(クリエイティブ)のバラエティ
提携するアフィリエイターが運営するサイトは多様です。基本とするバナーサイズは当然のように用意することはもちろん、バナーサイズごとに訴求方法が異なるものを用意するとアフィリエイターに紹介してもらいやすいです。
プログラム紹介文
結構手を抜きやすい部分ですが、プログラム紹介文も何気に大事です。
- その商品の特徴が何なのか
- 誰に対して売りたい商品なのか
- 競合他社と比べて優位な点は何なのか
が明確でないとアフィリエイターは紹介しにくいため敬遠します。
提携審査の有無
アフィリエイトプログラムと提携するにあたって審査があるものも同様に敬遠されがちです。よっぽど稼げることが分かりきっているような場合を除き、まず提携しようと思いません。提携の承認作業を月1回の頻度でしかやらない場合は最悪だといえます。
提携審査をする目的は、アダルトやギャンブル、その他自社ブランドを毀損するようなサイトへの掲載を避けることだと思います。
それはそれである程度ブランドが出来上がっている会社の場合には仕方のないことだとは思いますが、どうしても提携審査をする場合にはプログラム紹介文に「土日祝日を除き、毎日提携審査の承認作業をしていますのでお気軽に提携してください」「〇〇のような記載があるサイトの提携・掲載はお断りしています」などの一文を入れるといいでしょう。
特単の条件が明確かどうか
アフィリエイターとしては、どれくらいの成果件数を発生させたら報酬がアップするのかなど条件が明確なプログラムは前向きに頑張ります。
「月に10件以上で3000円に報酬アップします」など特単条件を明確に記載するといいでしょう。
地道なリクルーティング作業も必要
集客したい検索ワードで上位表示しているサイト1つ1つに掲載依頼のアプローチをかけることをASPではリクルーティングと言います(ASPによって違うかもしれません)。
ここまでご紹介してきたアフィリエイトプログラムを魅力的にすると同時に、地道に掲載先を増やすためのリクルーティングも必要です。
アフィリエイトサイトには、問い合わせ手段がなかったり、運営者情報のページがなかったりすることがありますが、ASPではこの辺の記載がないサイトであってもわかることがあります。
ですので、リクルーティングは基本的にはASPに任せていいですが、例えば以下のようにあらかじめ条件を決めて決裁権をASP担当者に移譲することで交渉しやすくなります。
- 検索順位5位までは、1件3,000円
- 検索順位10位までは、1件2,000円
- ランキングサイトの場合、1位掲載でさらに1,000円アップ(月間10万円の固定費保証)
のようにです。
理由としては、ASP担当者がアフィリエイトサイト運営者と連絡が取れて交渉しても、単価などの条件面をいくらにするかいちいち広告主に確認しないといけない場合、時間がかかってしまい思うように交渉も進みません。ASP担当者もアフィリエイトサイト運営者も熱が下がります。
ASP担当者にリクルーティングを依頼する場合には、ある程度の決定権を移譲することをオススメします。
ASP担当者が動いてくれない場合は?
ASP担当者は当然ですが会社から売り上げ目標を与えられています。大手ASPの場合で、だいたい営業一人当たりに200-300社くらいの広告主が割り振られ、その中で成果報酬額で4,000万円を売り上げるようにといった具合で目標が設定されます。
200-300社も受け持っていると1社1社丁寧に対応していると効率が悪いため、うち1-2割くらいに絞って常日頃からコミュニケーションをとるクライアントを決めてるケースがほとんどです。
そうなると、ほとんどの広告主は見向きもされません。問い合わせがあった時だけ対応する程度で、ASP担当者自ら積極的に動くことはまずないと言っていいと思います(なかには、問い合わせがあっても先延ばしでなかなか対応されないようなこともあると思います)。
では、どのようにしたら動いてくれるでしょうか。
ASP担当者も人間である
動いてくれないからと言って怒鳴ったりすることはしてはいけません。怒鳴った時点で、まずその会社のために動こうという気持ちはなくします。もし、まだ会ったことがないようであれば、まずはASPに訪問してみて雑談をメインに打ち合わせの時間をもらうといいでしょう。
打ち解けたら、つぎは外で会えるよう(ランチや飲みなど)約束を持ちかけます。こうすることでビジネス関係なく、対人間のコミュニケーションができて、「この人のためになんとかしたい」という気持ちがASP担当者にも生まれるようになります。
私はかなり単純でしたので、これだけで自分の売り上げ目標よりも、その人のためになんとかしようと思えました。
アフィリエイトの代理店は要らない!(個人的に)
広告主とASPの中間に入る代理店も多くありますが、個人的にはオススメしません。代理店が間に入って上手くいってる例はあまり見たことがありません。あるにはあるのですが、広告主がもともと有名なブランドを持っている場合がほぼ全てで、それは代理店の成果ではありません。利益の搾取ですw(言い過ぎですかね)
上手くいかない理由としては、
- スピード感が落ちる→ASP担当者も代理店経由の広告主ははじめから注力しないことが多い
- 現場の状況を把握しにくい
ためです。
アフィリエイターと交渉するASP担当者がいて、ASP担当者が条件面を確認するために代理店に確認して、代理店が広告主に確認して、となると1つの確認のために多くの時間がかかるため、正直アフィリエイターもASP担当者もやる気なくします。
先のリクルーティングの例にように、広告主がある程度の権限を代理店に移譲していれば上手くいく面もありますが、やはり代理店を介さずに直接ASPと契約した方が、現場の熱も伝わりやすいですし成功しやすいです。
私がASPにいた時にも、もともと代理店経由だった広告主が、あまりにも代理店が働かないため、直契約に切り替わったという例がいくつもありました。
最後に
アフィリエイト広告主のみなさんいかがでしたでしょうか?アフィリエイト広告の運用を成功させるための方法をご紹介してきました。基本的にやるべきことは、
- アフィリエイトプログラムの改善
- 商品自体の魅力を上げること
- 地道なリクルーティング
の3つです。ASPの担当者がなかなか動いてくれない場合には、ビジネス関係なく人間どうしのコミュニケーションが必要です。
この記事がきっかけで少しでも多くの広告主がアフィリエイトで成功することを願っています!